【飛行機の謎】格安で大満足!旅好きが注目する「以遠権」の魅力

成田空港のエチオピア航空搭乗ゲート表示と、成田から仁川へ向かう機内エアショー画面を左右に配置し、以遠権の魅力を紹介するブログ用サムネイル。 旅行研究室

みなさんは週末のソウル旅行を計画するとき、どうやって航空券を探していますか?

スカイスキャナーなどの比較サイトで「東京(成田)発・ソウル(仁川)行き」を検索すると、チェジュ航空やジンエアー、ピーチといったお馴染みのLCC(格安航空会社)に混ざって、ある「不思議な航空会社」が目に飛び込んでくることがあります。

価格はLCC並みに最安クラスなのに、飛行機はピカピカの最新鋭大型ボーイング787、おまけに預け荷物も無料。そんな破格の条件を提示しているのが、今回の主役『エチオピア航空(Ethiopian Airlines)』です。

「えっ、エチオピア? アフリカの航空会社が、なぜ日本と韓国の間を飛んでいるの?」

「ソウルに行きたいだけなのに、そのままアフリカのアディスアババまで連れて行かれちゃうんじゃ…」

なんて不安に思う方もいるかもしれませんね(笑)。

実は私も去年の12月に、このエチオピア航空の成田〜仁川便を往復で利用したことがあります。価格が安いのはもちろん、荷物もたくさん預けられて、たった2時間半のフライトなのに本格的な機内食まで楽しめる最高のフライトでした。(※詳しい往復搭乗記は別の記事にまとめているので、ぜひ合わせて読んでみてくださいね!)
エチオピア航空でソウル往復!意外なコスパと機内食レビュー

結論から言うと、アフリカへ連れ去られることは絶対にありません!

これこそが、航空運送や物流の世界が私たち旅行者にもたらしてくれる最高のギフト、国際法上の特殊な権利『以遠権(いえんけん) / 第5の自由』によるものなのです。今回は、この知ると旅が100倍面白くなる「以遠権フライト」のミステリーを紐解いていきましょう!

飛行機が空っぽで飛ぶのは罪!?「第5の自由(以遠権)」の仕組み

そもそも、なぜアフリカの航空会社がアジアの国と国の間で乗客を乗せてビジネスができるのでしょうか? その謎を解く鍵は、この路線の「本当のルート」にあります。

エチオピア航空ET672便の本来の飛行ルートを見てみましょう。

  • [エチオピア・アディスアババ] ➔(約11時間の長距離飛行) ➔ [韓国・ソウル/仁川] ➔(約2時間半の短距離飛行) ➔ [日本・東京/成田]

実はこの飛行機、アフリカから出発してソウルを経由し、最終目的地である成田へと向かう壮大なロングフライトなのです。

ここで、航空会社にとって非常に頭の痛い「物流のジレンマ」が発生します。

アフリカを出発した飛行機がソウルに到着すると、乗客の約70%がそこで降りてしまいます。しかし、飛行機は最終目的地の成田まで飛ばさなければなりません。つまり、ソウルから成田へ向かう区間は、座席も貨物室も「70%が空っぽ」の状態で飛ぶことになってしまうのです。

運送業界において、何も載せずに「空気だけを運んで飛行機を飛ばすこと」は、莫大な固定費の無駄遣いであり、最大の禁忌(タブー)とされています。

そこで救世主となるのが、1944年のシカゴ条約で定められた国際航空法「第5の自由(以遠権)」です。 これは、「自国(エチオピア)から出発した路線において、経由国(韓国)と第3国(日本)の間だけで移動する乗客や貨物を載せてビジネスをしてもいいですよ」という、国際社会が特別に認めた例外的な権利なのです。

「どうせ空っぽで成田まで飛ばさなきゃいけないなら、1席2〜3万円でもいいからお客さんを乗せて席を埋めたほうが絶対に得!」という、まさに限界費用ゼロの「ついで販売」だからこそ、LCC並みの衝撃的な安さが実現しているのです。

LCCとは次元が違う!旅行者が恩恵を受ける「圧倒的3大メリット」

この以遠権の仕組みのおかげで、私たち日本の旅行者は、通常のLCCでは考えられないような贅沢な特典を格安で享受することができます。

① 受託手荷物46kg無料の奇跡

通常のLCC(ピーチやチェジュ航空など)の場合、受託手荷物は15kgまでの1個が基本で、それ以上は数千円の追加料金が取られますよね。

しかし、このエチオピア航空はアフリカ本土発の「長距離国際線」のルールがそのまま適用されます。そのため、なんと「23kgのスーツケース✕2個=合計46kg」まで預け荷物が100%無料になります!

ソウルのオリーブヤングでコスメを爆買いしたり、東大門で洋服をスーツケースがはち切れるほど買い込んでも、重量オーバーの追加料金は一切かかりません。

② LCC価格で乗れる最新の大型ワイドボディ機(B787 / A350)

通路が1本しかなく、左右に3席ずつ並んだ狭い小型機(B737など)での移動は、短時間とはいえ少し窮屈ですよね。

ですが、この路線で投入されるのは通路が2本ある最新鋭の大型ハイテク機(ボーイング787ドリームライナーやエアバスA350)。機内の気圧や湿度が最適にコントロールされているため耳が痛くなりにくく、全席に個人モニターが完備されているので、映画を見ているうちに、あっという間にソウルに到着します。

③ フルサービスの機内食とアフリカビールが無料

わずか2時間半ほどのフライトですが、離陸して安定飛行に入るとすぐに、温かいホットミール(ビーフまたはチキン)が提供されます。さらに、エチオピアの伝統的なビールである『ハベシャ(Habesha)』やワインなどのアルコール類、ソフトドリンクもすべて無料で楽しめます。LCCで水1本を数百円で買うのとは、満足度が格段に違います。

良いことばかりじゃない?以遠権フライトの「3大デメリット」

ここまでメリットばかりをお伝えしてきましたが、物流の裏技を利用している以上、いくつかの「注意点」やリスクも存在します。納得した上で賢く利用しましょう。

① 地球の裏側からのバタフライ効果(連鎖遅延リスク)

この飛行機は、成田や仁川ベースで動いているわけではありません。地球の裏側にあるアフリカのアディスアババを何時間も前に出発してきた機体です。

もしアフリカで猛烈な豪雨があったり、現地の空港でトラブルが発生して出発が遅れると、その遅れがソウル、そして成田へとドミノ倒しのように引き継がれます。あなたが成田空港のゲートで待っているとき、乗るべき飛行機がまだ日本にすら到着しておらず、気付けば3〜4時間のディレイ(遅延)になっている…というリスクが、通常のLCCよりも高くなります。

② 機体のドアをくぐった瞬間に広がる「未知の世界」

成田空港から機内に一歩足を踏み入れた瞬間、日本の航空会社のような「清々しく、しっかりと清掃されたばかりの空間」を期待してはいけません。

そこには、すでにアフリカから12時間以上も旅をしてきた数百人のグローバルな乗客たちの熱気や、上の棚(オーバーヘッドビン)を埋め尽くす大量の免税品の袋、放置されたゴミ、そして独特のエスニックな香辛料の香りが漂っています。ゲートをくぐった瞬間から、すでに海外旅行が始まっているような独特の雰囲気があります。

③ 機内アナウンスの「言語の壁」

CAのほとんどはエチオピア人の方々です。日本語でのサポートは非常に限定的で、機内アナウンスの英語も独特のアクセントがあります。

もし「非常口座席に座って、英語でスムーズなコミュニケーションをとる自信がない…」という方は、指定席を選ぶ際に、静かにエコノミークラスの窓側を選んでおくのが無難です。

【徹底比較】一般的なLCC vs 以遠権フライト(エチオピア航空など)

ここで、通常のLCCと以遠権フライトの違いを分かりやすく表にまとめてみました。

比較項目一般的なLCC(格安航空会社)以遠権フライト(エチオピア航空など)
運賃価格約2〜3万円約2〜3万円(同等、またはそれ以下の場合も)
無料受託手荷物なし、または通常15kgが1個まで23kgが2個まで(合計46kg)無料
機材・座席3-3配列の小型機(やや手狭)3-3-3配列などの快適な大型機(ワイドボディ)
機内食・ドリンクすべて有料での購入ホットミール・アルコール類が全て無料
定時運航性出発地ベースのため遅延予測が比較的容易アフリカ発のため、前方の路線での連鎖遅延リスク高め

世界にはたくさんある!私が注目・体験した魅力的な以遠権ルート

今回ご紹介した「成田〜仁川」のエチオピア航空以外にも、世界中(そして日本発着)には、航空マニアや旅慣れたバックパッカーが愛してやまない面白い以遠権ルートがたくさん存在します。その一部をシェアしますね!

  • 【実際に乗ってみた!】成田(NRT) − 仁川(ICN) [エチオピア航空]
  • 今回ご紹介したルート。東京〜ソウルを圧倒的な高コスパで移動できる最強の裏技です。
  • 【実際に乗ってみた!】イスタンブール(IST) − クアラルンプール(KUL) − シドニー(SYD) [ターキッシュ エアラインズ]
  • 私はイスタンブールからシドニーまでの全区間を搭乗しました。ヨーロッパの航空会社でありながら、アジア〜オセアニア間を結ぶという非常にダイナミックな以遠権路線です。
  • 【実際に乗ってみた!】イスタンブール(IST) − サンパウロ(GRU) − ブエノスアイレス(EZE) または サンティアゴ(SCL) [ターキッシュ エアラインズ]
  • 南米の移動でも大活躍!私はイスタンブールからサンパウロの区間を利用しました。
  • 【いつか乗りたい!】上海(PVG) − オークランド(AKL) − ブエノスアイレス(EZE) [中国東方航空]
  • 航空ファンの間でも有名。ニュージーランドを経由して南米アルゼンチンまでを繋ぐ、世界最長クラスのロマンあふれる以遠権路線です。

まとめ

「アフリカの飛行機でソウルに行く」という、一見するとミステリーのような選択肢。

その裏側には、広大な空を無駄なく活用しようとする国際航空法とグローバル物流の素晴らしい知恵(以遠権)が隠されていました。

連鎖遅延などのデメリットを少しだけ頭に入れておけば、LCC並みの料金で、大型機の快適な旅と46kgもの無料手荷物枠を手に入れられる、まさに旅行者にとっての「オアシス」のようなフライトです。

次に航空券比較サイトで、ちょっと見慣れない珍しい国の航空会社を見つけたら、怖がらずにぜひ詳細をチェックしてみてください。そこには、あなたを驚かせる素晴らしい旅の選択肢が待っているかもしれませんよ!

よくある質問 (FAQ)

Q1. エチオピア航空のソウル便に乗ったら、本当にアフリカまで連れて行かれませんか?
A1. はい、絶対に大丈夫です(笑)!この便は「仁川(ソウル)」を経由地・終着地として運行しているため、ソウル行きのチケットをお持ちの方は全員そこで一度飛行機を降ります。そのまま機内に閉じ込められてアディスアババまで連れて行かれることはありませんので、安心してソウル観光を楽しんでください。

Q2. LCC並みに安いとのことですが、マイルは貯まりますか?
A2. はい、貯まります!エチオピア航空は、ANA(全日本空輸)と同じ世界最大の航空連合「スターアライアンス」に加盟しています。そのため、購入した航空券の予約クラス(運賃種別)がマイル積算の対象であれば、ANAマイレージクラブなどにマイルを貯めることが可能です。

Q3. 遅延のリスクが心配ですが、当日のスケジュールはどう組むべきですか?
A3. 地球の裏側(アフリカ)から長い距離を飛んでくる路線の特性上、通常のLCCや日本国内を拠点とする航空会社よりも、大幅な遅延(ディレイ)が発生する確率はやや高めです。そのため、当日にソウルで絶対に遅れられない重要な約束がある場合や、別の交通機関へのタイトな乗り継ぎがある場合は、数時間の遅れを想定して、時間に十分な余裕を持たせたスケジュールを組むことを強くおすすめします。