スーツケースにAirTagは違法?FAA・IATAの預け入れ規定

スーツケースに入れたAirTagとCR2032電池、空港の手荷物受取所を組み合わせた、FAA・IATAの預け入れ規定を解説するブログ用アイキャッチ画像。 旅行研究室

海外旅行へ出かけた際、手荷物受取所のターンテーブルの前で「「自分のスーツケースがちゃんと出てくるかな」と不安を感じながら待った経験は、皆さんにもあるのではないでしょうか?特に乗り継ぎが多いアメリカやヨーロッパの路線に乗る時は、「途中で荷物が迷子になったらどうしよう……」とヒヤヒヤすることが何度もありますよね。

そんな背景もあって、最近はスーツケースの中にAppleの「AirTag(エアタグ)」のようなスマートトラッカーを忍ばせている方が本当に増えました。

スーツケースを紛失しないよう、内部のストラップ部分にAppleのAirTagを取り付けている様子。グレーの内装にAirTagケースが固定されている。

私もこれまで80回以上飛行機に乗ってきて、運よく荷物を完全に紛失するロストバゲージに遭遇したことはありません。それでも、預け入れた荷物がなかなか出てこなくてハラハラした経験は何度もありました。そこで去年の夏からはAirTagを購入し、常にスーツケースに入れて旅行するようになったのですが、これが本当に安心できるんです。特に乗り継ぎの際、経由地の空港でも自分のスーツケースがしっかり自分についてきているか確認できるのは、とても心強いポイントです。

でも、このスマートトラッカーに関する航空規定を正確に把握していないと、空港の保安検査で爆発物と勘違いされて荷物を開けられたり、最悪の場合は没収されたりする可能性があるってご存知でしたか?今回は、皆さんが安全で心置きなく旅行を楽しめるように、米国連邦航空局(FAA)と国際航空運送協会(IATA)の規定に基づいた「スマートトラッカーの預け入れ荷物ルール」を詳しく解説していきます。

ロストバゲージ多発が引き起こしたスマートトラッカーの流行

コロナ禍が明け、世界中の空港機能が正常化に向かう過程で、深刻な人手不足が発生しました。これにより、2022年から2023年にかけて、いわゆる「世界的なロストバゲージの乱」が起きたのです。海外のニュースで、数万個のスーツケースが空港の片隅に放置されている映像を見て、衝撃を受けたことを今でも覚えています。

そんな不安の中で一筋の光となったのが、AppleのAirTagに代表されるBluetoothやUWB(超広帯域)を活用した位置情報トラッカーです。500円玉より少し大きいこの機器をスーツケースに入れておけば、世界中のどこに自分の荷物があるのか、スマートフォンからリアルタイムで追跡できます。今や、パスポートと同じくらい重要な「旅行の必須アイテム」として定着しつつあります。

電源オンのまま預けるのは危険?リチウム電池の発火リスク

しかし、スマートトラッカーが流行するにつれて、航空保安の業界では予期せぬ論争が巻き起こりました。それが「バッテリーの発火リスク」です。

海外旅行に行ったことがある方ならご存知の通り、スマートフォンのモバイルバッテリーやリチウムイオン電池が内蔵された電子機器は、絶対に預け入れ荷物(受託手荷物)に入れることができず、必ず機内に持ち込まなければなりません。貨物室の中でバッテリーが気圧の変化や衝撃を受けて、爆発や火災を引き起こす危険性があるためです。

AirTagのようなスマートトラッカーも、作動させるためには「CR2032」などのコイン型リチウム電池を使用します。しかも、位置情報を送信し続けるためには、貨物室の中でも「電源がオンの状態」を維持しなければなりません。これが、「バッテリーを含む機器は、貨物室では電源を切らなければならない」という従来の航空保安規定と真正面から衝突することになったのです。

欧州大手航空会社による「AirTag禁止騒動」と撤回の顛末

この規定の衝突は、やがて大きな騒動へと発展しました。2022年の後半、ヨーロッパを代表する大手航空会社であるドイツのルフトハンザ航空が、「AirTagの電源を入れたまま預け入れ荷物に入れることは、国際民間航空機関(ICAO)の危険物規定に違反する」として、事実上AirTagの使用を全面禁止にしてしまったのです。

このニュースは、世界中の旅行コミュニティを騒然とさせました。「荷物の紛失率が高いヨーロッパの航空会社が、自分たちの責任を逃れるためにズルをしているのではないか」という批判が殺到したのです。騒ぎが手のつけられないほど大きくなった結果、各国の航空当局がこの問題に介入し始め、ルフトハンザ航空もほどなくして禁止措置を撤回するというドタバタ劇で幕を閉じました。

FAAとIATAの最終決定:リチウム含有量0.3g以下の例外措置

では、現在の公式な国際規定はどうなっているのでしょうか?結論から申し上げますと、「安心して預け入れ荷物に入れて大丈夫」です。

騒動が大きくなったことを受け、米国連邦航空局(FAA)と国際航空運送協会(IATA)は、スマートトラッカーに関する明確な解釈と新しいガイドラインを発表しました。その核心となるのが「リチウムの含有量」です。

バッテリーのスペックと真実

AirTagやスマートタグに使用されている「CR2032」コイン型電池のリチウム含有量は、わずか約0.1gに過ぎません。

AppleのAirTagで使用できるDuracell製CR2032 3Vリチウムコイン電池の表面を、黒い背景の上で撮影した写真。

安全基準(例外措置)

IATAの乗客用リチウム電池ガイドラインとFAAの規定によると、「リチウム含有量が0.3g以下のリチウム金属電池を使用する携帯用電子機器は、電源が入った状態であっても預け入れ荷物として貨物室に搭載することが許可される」と明記されました。

つまり、スマートトラッカーは発熱や火災を引き起こすほどのエネルギーを持っていないということが、科学的にも法的にも証明されたわけです。

乗り継ぎ空港でキャリーケースを追跡・対処する賢いコツ

規定上まったく問題がないことが分かったところで、スマートトラッカーを200%活用するための実践的なコツをご紹介しますね。

  • 乗り継ぎの待ち時間にアプリをチェックする
    飛行機を乗り換える際、経由地の空港のラウンジや搭乗ゲートでスマートフォンのアプリを開いてみましょう。自分の現在地(乗り継ぎ空港)とキャリーケースの位置が同じ場所に表示されていれば、荷物も無事に同じ飛行機に乗り換えたという証拠です。
  • ロストバゲージ発生時のカウンターでの立ち回り
    最終目的地に到着したのに、待てど暮らせど荷物が出てこない……。そんな時でも慌てずに、手荷物カウンター(Baggage Claim Desk)へ向かってください。スタッフが荷物を探すためにPCで検索している間に、スマートトラッカーの地図アプリを開いて見せ、「私の荷物は今、パリのシャルル・ド・ゴール空港の第2ターミナルで止まっています」と伝えましょう。漠然と荷物を探してもらうより、処理のスピードが圧倒的に早くなります。

まとめ

飛行機の預け入れ荷物にAirTagなどのスマートトラッカーを入れることは、航空保安法やFAA・IATAの規定に照らし合わせても合法であり、全く問題ありません。むしろ、万が一のロストバゲージに備えるための強力なお守りになってくれます。

これからの海外旅行では、ぜひスーツケースにスマートトラッカーをポンッと入れて、心に余裕を持った素敵な旅を楽しんでくださいね!

よくある質問 (FAQ)

Q1. どの航空会社でも預け入れ荷物にエアタグを入れて大丈夫ですか?

基本的には、FAAやIATAの規定に準拠している世界の主要な航空会社であれば問題なく預け入れることができます。ただし、LCCや一部の地域の航空会社では独自の厳格なルールを設けている場合もゼロではないため、ご出発前にご利用の航空会社の公式サイトで最新の手荷物規定をチェックしておくとより安心です。

Q2. 飛行機に乗る前に、エアタグの電池は外すべきですか?

いいえ、外す必要はありません。最新の規定により、リチウム含有量が少ないコイン型電池を使用したトラッカーは、電源がオンの状態で預け入れ荷物に入れても安全と認められています。電池を入れたままにしておかないと追跡機能が使えなくなってしまうので、そのまま預けてくださいね。

Q3. 機内持ち込み手荷物(手元に置くバッグ)にエアタグを入れても問題ないですか?

はい、まったく問題ありません。預け入れ荷物だけでなく、パスポートや貴重品を入れた機内持ち込み用のリュックやハンドバッグに付けておくのも、盗難や置き忘れ防止に非常に役立つので強くおすすめします。

AirTagと預け荷物のルールを確認するときに参考になる公式サイト

AirTagは、CR2032コイン型リチウム電池を使用する小型の紛失防止タグです。モバイルバッテリーや予備のリチウム電池とは扱いが異なる場合がありますが、リチウム電池を含む製品であることに変わりはありません。

そのため、スーツケースに入れる前には、利用する航空会社・出発空港・乗り継ぎ空港・到着国の最新ルールも確認しておくと安心です。

最終的な判断は、航空会社・空港・国ごとの運用によって変わる場合があります。特に、スマートラゲージや電池を内蔵した電子機器を預ける場合は、利用する航空会社の案内も確認してください。