イタリアで食中毒?現役薬剤師が現地薬局で確認した薬と対処法

イタリアの街角にある薬局(FARMACIA)の緑の十字サインと看板、入口を写した写真。 イタリア

皆さんは旅先で美味しいものを食べて、お腹を壊してしまった経験はありますか? 私は2026年1月のイタリア旅行中、フィレンツェでまさにその状況に陥りました。

原因のひとつとして考えたのは、前日に食べたステーキの焼き加減でした。レアで注文したお肉がかなり生に近く、翌日から強い腹痛と下痢に襲われてしまったのです。

幸い、私は本業が薬剤師です。そこで、すぐに現地の薬局(Farmacia)へ行き、成分・用法・注意点を確認したうえで、自分の症状に合うと判断した薬を購入しました。私の場合は、その後数日で体調が落ち着きました。

イタリアでは、私のようにステーキやタルタルなどの生肉料理で食あたり(食中毒のような症状)を起こす旅行者が少なくありません。 そこで今回は、薬剤師である私が実際にイタリアの薬局で確認して購入した薬と、そのときに見た成分・注意点を、体験談としてまとめます。

まず結論から言うと、私の症状では以下の成分を確認して選びました。

  • プロバイオティクス(整腸剤): 腸内環境を整える目的で確認した成分
  • 鎮痙剤: 差し込むような腹痛がつらいときに確認した成分
  • 電解質(Electrolyte, ORS): 水のような下痢が続く場合の水分補給として確認したもの

※ただし、同じ腹痛や下痢でも原因や重症度は人によって異なります。読者の方が自己判断で同じ薬を選ぶことを勧めるものではありません。高熱、悪寒、血便、激しい嘔吐、強い脱水症状、我慢できない腹痛、症状が長引く場合は、薬局の薬だけで対処しようとせず、救急病院や観光客向けの医務室など医療機関に相談してください。

※この記事は、薬剤師である私がイタリア旅行中に腹痛・下痢を経験し、現地の薬局で成分・用法・注意点を確認したうえで薬を購入した体験談です。特定の薬の購入や服用、自己診断、自己治療を勧めるものではありません。
腹痛や下痢の原因は、食中毒だけでなく、ウイルス性胃腸炎、食べ過ぎ、持病、薬の影響などさまざまです。高熱、血便、激しい嘔吐、強い脱水症状、我慢できない腹痛、症状が長引く場合は、薬局だけで済ませず医療機関を受診してください。
薬剤師である私の判断は、あくまで私自身の症状・体調・既往歴を前提にしたものです。読者の方が同じような症状になった場合でも、妊娠中・授乳中の方、小さな子ども、高齢者、持病がある方、服用中の薬がある方、アレルギーがある方は、自己判断で薬を選ばず、必ず医師または薬剤師に相談してください。

フィレンツェで生のステーキを食べて…

事が起きたのは、2026年1月14日のことでした。

その日のランチに、フィレンツェのレストランでフィレステーキをミディアムレアでいただきました。 これが本当に絶妙な焼き加減で、とても美味しかったのです。 「このお店なら信頼できる!」と思い、同じ日のディナーも同じお店を予約しました。

そしてディナーでは、さらに柔らかさを求めて「レア」で注文しました。 しかし、昼と夜ではシェフが違ったのでしょうか。 なんと、運ばれてきたステーキの一部は、完全にほぼ生(レアすぎる)状態でした。

「まあ、美味しいから大丈夫かな」 その時はそう思って完食してしまったのですが、これが間違いでした。 海外に行く際、私は普段あまり常備薬を持ち歩かないタイプだったのも災いしました。

フィレンツェで食べたフィレ(ヒレ)ステーキの断面写真。レアで注文したが中心部がほぼ生に近い状態だった。

翌日の午後、異変が…

翌日の午後から、お腹に違和感を感じ始めました。 具体的には、以下のような症状です。

  • 左下腹部の鈍い痛み
  • 頻繁な便意
  • 粘り気のある泥状の便(緑色で臭いがきつい)

つまり、食中毒のような症状が出ている状態でした。ただ、幸いだったのは、発熱や悪寒、血便、嘔吐といった重い症状がなかったことです。
そのため、薬剤師として自分の症状と注意点を確認したうえで、まずは現地の薬局で購入できる薬で様子を見ることにしました。

私がイタリアの薬局で確認して購入した2つの薬

具体的には、私の症状に必要なのは、腸内環境を整える「プロバイオティクス」と、痛みを止める「鎮痙剤」の2つです。 世界的に有名な製品といえば、以下の2つが挙げられます。

  1. Codex (成分:Saccharomyces boulardii / サッカロミセス・ブラウディ)
  2. Buscopan (成分:Hyoscine Butylbromide / ブスコパン)

私はすぐに近くのFarmacia(薬局)へ向かいました。 イタリア語は話せませんが、Google検索で薬の画像を見せて、薬剤師さんに「これが欲しい」と伝えました。

無事に購入できたのがこちらです。

  • Codex (12カプセル入): 15ユーロ
  • Buscopan (40錠入): 17.90ユーロ
    • (40錠もいらないのですが、在庫がこれしかなくて…(涙))
イタリアの薬局で購入した「Buscopan(ブスコパン)」の箱と、「Codex」の説明書(添付文書)を並べて写した写真。

なぜこの薬が必要なのか?

ここで少し、薬剤師として専門的な解説をします。

生肉によって食中毒のような症状が出ているということは、有害な菌が腸内に侵入している可能性が高いです。 そのため、有害菌が増えるのを防ぎ、毒素を排出させるためにはプロバイオティクス(Codex)が必要です。

また、お腹が痛むのは腸が過剰に動いて痙攣(けいれん)しているからです。 これを抑えるために、鎮痙剤(ブスコパン)が必要になります。

症状別の薬の選び方と注意点

1. 水様便(水のような下痢)の場合

もし、泥状ではなく「水がシャーシャー出るような下痢」の場合は、もう一つ必要なものがあります。 それは電解質(Electrolyte)です。

脱水症状を防ぐためには、単なる水やスポーツドリンクでは足りません。 体液に近い濃度の電解質が必要です。 薬局で「Electrolyte(エレクトロライト)」または「ORS」という画像を見せれば、たいてい置いてあります。 下痢をするたびに、これを飲んで水分を補給してください。

2. 買ってはいけない薬(重要!)

食中毒が疑われるときに、自己判断で使わないほうがよい薬があります。それが、ロペラミド(Loperamide)などの強い下痢止めです。

特に、発熱、血便、強い腹痛がある場合は、ロペラミドのような腸の動きを止める薬を自己判断で使うのは避けてください。原因によっては、症状の悪化につながるおそれがあります。

どうしても移動などで困る場合でも、医師または薬剤師に相談してから使うようにしましょう。

3. 病院へ行くべきサイン

以下のような症状がある場合は、薬局だけで対応しようとせず、できるだけ早めに医療機関へ相談してください。

  • 38度以上の発熱
  • 悪寒(震え)
  • 血便
  • 激しい嘔吐
  • 強い脱水症状
  • 我慢できない腹痛
  • 症状が2〜3日以上続く場合
  • 小さな子ども、高齢者、妊娠中・授乳中、持病がある方の場合

病院に行く際は、パスポートと海外旅行保険証券を忘れずに持参しましょう。

実際の服用方法と経過

私が実際に試した服用方法と、その後の経過を共有します。 ※あくまで私の例ですので、基本は現地の薬剤師や説明書の指示に従ってください。

服用量の調整

  • ブスコパン(鎮痙剤): 通常は1回1~2錠(1錠10mg)、1日3~5回です。 私はまず1回1錠、1日3回からスタートし、痛みが引いてきたら回数を減らしました。
    ※緑内障、前立腺肥大による排尿障害、腸閉塞が疑われる症状、重い持病がある方は使えない場合があるため、自己判断で服用しないでください。
  • Codex(プロバイオティクス): 基準は1回1カプセル、1日1~2回です。 しかし、整腸剤はアレルギー等がなければ、短期的に少し多めに飲んでも大きな問題はありません。 私は早く治したかったので、1日4回(朝・昼・夕・寝る前)、1カプセルずつ服用しました。

【注意】 Codexは「生きた菌(酵母)」なので、熱いお湯で飲むと効果がなくなります。 常温の水で飲みましょう。 また、もし水虫の薬など「抗真菌薬」を飲んでいる方は、Codex(真菌=カビの一種)だと効果がなくなってしまいます。その場合は、一般的な「乳酸菌」の整腸剤を選んでください。

回復までの日数

服用を始めてから、トイレに行く回数は徐々に減っていきました。ブスコパンを飲む間隔も長くなり、便の状態も少しずつ落ち着いていきました。

私の場合は、3日目の朝にはかなり体調が戻ったと感じました。

それでも、腸内の有害菌を完全に追い出すため、残ったCodex(整腸剤)はなくなるまで毎日1~2カプセル飲み続けました。 おかげで、残りのイタリア旅行も元気に楽しむことができました。


まとめ

最後に、イタリアの食事は本当に美味しいですが、生肉や魚介類を食べた後にお腹を壊すこともあります。もし「お腹がおかしいな?」と思ったら、無理をせず、症状の強さを見ながら薬局や医療機関に相談しましょう。

  1. 軽い症状なら、まず症状と重症サインを確認する
  2. 腹痛がつらい場合は、鎮痙剤が使えるか確認する
  3. 水のような下痢が続く場合は、電解質やORSを確認する
  4. 発熱、血便、激しい嘔吐、脱水症状があれば病院へ行く

この流れを知っておくと、旅先で体調を崩したときも慌てずに行動しやすくなります。


よくある質問 (FAQ)

Q1. イタリア語ができなくても薬を買えますか?
私の場合は、スマートフォンで薬の商品名や画像を見せることで購入できました。ただし、薬の名前だけでなく、「腹痛」「下痢」「発熱なし」「血便なし」など、自分の症状も翻訳アプリで一緒に伝えると、薬局で確認しやすくなります。

Q2. 処方箋がなくても購入できますか?
今回紹介したCodexやBuscopan、電解質などは、イタリアでは処方箋なし(OTC医薬品)で購入可能です。薬剤師さんに相談すれば、カウンターから出してくれます。